
歯並びを治すなら早い方がいいの?
「子どもの矯正は、早く始めた方がいいですか?」
保護者の方からよく聞かれる質問です。
これに対する私の答えは、「何を目的にするかによります」です。
矯正治療というと、装置を使って歯を動かし、きれいに並べる治療を思い浮かべる方が多いと思います。
もし目的が「永久歯を動かしてきれいに並べること」だけなのであれば、永久歯が生えてくるのを待つという考え方もあります。
でも、私たちが子どものお口を見るとき、気にしているのは歯並びだけではありません。
その子がきちんと呼吸できているか。
よく眠れているか。
舌や唇を正しく使えているか。
しっかり噛んで、飲み込めているか。
そして、その機能を使いながら顔や顎がどのように成長しているのか。
歯並びは、そうした子どもの成長の中にある一部分だと考えています。
## 歯並びだけを見ていていいのでしょうか?
歯は、何もないところに勝手にきれいに並ぶわけではありません。
顎の成長、舌の位置、唇や頬から受ける力、噛み方や飲み込み方など、さまざまな影響を受けながら生えてきます。
そして私たちが特に大切にしているのが呼吸です。
普段からお口が開いている、鼻ではなく口で呼吸している、寝ているときに口が開いている、いびきをかく。
こうした状態は、お口の中だけの問題ではありません。
呼吸は睡眠とも深く関わっています。
子どもにとって睡眠は、身体を休めるだけの時間ではなく、心身や脳が成長・発達していくためにも大切な時間です。
だから私たちは、「前歯が出ている」「歯がガタガタしている」という見た目だけではなく、その背景にあるお口の働きや呼吸まで見たいと考えています。
## 永久歯が生えるまで待って、本当に大丈夫?
「まだ乳歯だから、永久歯が全部生えてから矯正を考えよう」
もちろん、それで問題のないお子さんもいます。
でも、最初から「永久歯になるまで待つ」と決めてしまうことには、少し注意が必要です。
なぜなら、歯が生え替わるのを待っている間も、子どもの身体は成長し続けているからです。
その数年間に、
舌はどこにあるのか。
鼻で呼吸できているのか。
口を閉じられているのか。
どのように噛み、どのように飲み込んでいるのか。
そうしたことを毎日何度も繰り返しながら、子どもは成長していきます。
永久歯はあとから動かすことができても、過ぎてしまった成長の時間をあとから戻すことはできません。
だから、低年齢からお口を見る意味があると私たちは考えています。
## 早く歯を動かしたいわけではありません
低年齢から矯正を考える目的は、永久歯をできるだけ早く動かすことではありません。
これから永久歯が生えてくる場所をつくる。
歯がきちんと働ける顎やお口の環境をつくる。
舌や唇、頬をしっかり使えるようにする。
鼻で呼吸し、お口を閉じられる状態を目指す。
こうしたお口の働きを整えていくことは、歯並びを崩す原因そのものを減らしていくことにもつながります。
歯を並べることだけではなく、その子が本来持っている成長する力をできるだけ良い方向へ導くこと。
それが、子どもの時期からお口を見る大きな意味だと思っています。
## 「早く矯正する」ではなく「早く気づく」
だから、すべてのお子さんが小さいうちから矯正治療を始めることに適しているわけではありません。
診察してみれば、「今する事が負担になる」ということもあります。
でも、
「永久歯になったら考えればいい」
と最初から決めてしまうのではなく、今の成長がうまく進んでいるのかを一度確認しておく。
そこには大きな意味があります。
私たちは、
「矯正は早ければ早いほどいい」のではなく、「気づくのは早い方がいい」
と考えています。
歯並びが気になる。
永久歯が生える場所がなさそう。
いつもお口が開いている。
いびきや寝ているときのお口が気になる。
食べ方や飲み込み方が気になる。
そんなときは、「矯正」という言葉にとらわれずに相談してください。
今後どうなることが予測されるのか。
成長期だからこそ取り組んだ方がいいことがあるのか。
それとも、今は見守っていていいのか。
歯並びだけではなく、その子のこれからの成長と健康まで考えて、今できることを一緒に考えていきたいと思っています。
